理事長所信

【はじめに】

 新型コロナウイルス感染症は、一瞬にして世界の在り方を変えてしまいました。これまでの当たり前がそうではなくなりました。それは、我々の仕事、企業活動や家庭での日常生活だけではなく、青年会議所での活動、運動についても同じです。しかし、様々な被害、影響を被った人々の中から、この状況下でも変化に適応し、或いは変化を逆手に取って事業で成功した人、新たな価値を作り上げた人もいます。そうした人たちは、その外部の環境に成す術もなく悲観し、ただ流されるのではなく、自らが主体性を持って変化し、積極的に適応することで、物質的にも精神的にも安定し、成長を続けています。一方、我々一般社団法人浜田青年会議所を見ると、新型コロナウイルス感染症による各種事業の自粛といった対外的な問題、メンバーのモチベーション低下といった対内的な問題等を抱えていますが、それは組織が環境の変化に十分対応できていないことを示唆していると思います。さらに、近年は会員減少の問題も大きな懸案ですが、それも同じく、環境の変化に十分適応できていないことを示していると思います。1958年の創立以来、当会は明るく豊かな社会の実現を目指し、様々な活動、運動を行ってまいりました。それもひとえに、まちのために何ができるのかという問いに真摯に向き合い、変化にうまく適応しながら時代に合った公益事業に取り組んでこられた先輩諸兄のご努力の賜物と感じます。ここに来て、このコロナ禍を契機とし、我々は何を求められているのか、何をしなければならないのかを考え直します。そして、環境の変化に合わせる柔軟さと強かさを持ち、まさに千変万化の心意気で青年会議所活動、運動に取り組んでまいります。

【社会開発運動への取り組み】

 新型コロナウイルス感染症の影響以前に、浜田市は人口の流出、出生数の減少が進んでおり、歯止めがかかっていない状態です。いわゆる消滅可能性都市であり、このまま続くと2030年度予測で人口は5万人を下回り、比率においても生産年齢人口が53.4%まで低下、65歳以上人口が36.5%まで上昇します。こうした急速な働き手の減少、少子高齢化の進行に対して持続可能なまちをつくっていくためには、若者を増やす、残ってもらう、そのために魅力的な雇用の場を確保することが至上命題となります。ところで、当会が2017年度から2019年度まで実施した高校生政策甲子園では、行政や教育機関の関係者、そしてOB・OGの先輩方からも、好意的なご意見、高い評価を多数いただきました。「まちづくり」「ひとづくり」の観点を織り交ぜた、当会が独自に企画運営した公益事業であり、社会開発運動であったと言えます。その事業で1点忘れてはならないのは、島根県立大学との連携を模索した点です。例えば、何らかの課題解決を目的とした包括連携協定といった形にまでは至りませんでしたが、当日の運営に加わってもらう、基調講演をしていただく等、学生を事業に巻き込み、今後の連携の一歩となったと思います。2021年度には学部再編があり、地域に重きを置いた地域政策学部が創設されますが、現状2019年度の卒業生の県内就職者は34名(16.4%)で、就職実績企業を見ると浜田市内に残った卒業生はさらに少ないと思われます。この事実は、浜田市には県立大学の卒業生に見合う雇用がない、或いは雇用はあってもその企業の魅力が認知されていないことを示しているのではないでしょうか。前者は企業体力もあって短期的な解決は難しいかもしれませんが、後者については、青年会議所の社会開発事業として取り組む余地があると考えます。県立大学と地元企業と連携し、それらを結び付けて若者が浜田市に残るきっかけを与える公益事業を構築し、若者にとって魅力的な、持続可能なまちをつくるための運動を引き起こしていきます。

【伝統文化継承への取り組み】

 先輩諸兄より長年脈々と引き継いできた大名行列奴隊について、指導員の先輩方、大名行列保存会のご尽力もあり、2019年に浜田市無形民俗文化財となりました。しかし、こうして「保存」「継承」されてきた大名行列奴隊ですが、近年は当会と既存の協力団体のみでは演者の確保も困難になりつつあり、今後の事業継続に危機感を 抱くところです。また、そうした状況から、「発展」という要素を織り交ぜた事業構築まで至っていない実情があります。そこで、現状を打開し、今後の事業の発展を図るためにも、まずは何よりも事業の趣旨を理解してもらい、演者を幅広く募って事業に参加してもらうことが必要と考えます。昨年度は、新型コロナウイルス感染症対策として演技披露の場である浜っ子春まつりが中止になったこと、人が集まる練習形態であることから事業中止の判断をせざるを得ませんでしたが、結果は別として、従来は声掛けをしてこなかった団体へも参加依頼を進めていたところです。今年度も、新型コロナウイルス感染症の影響も見ながら演者を増やす取り組みを継続し、状況によっては練習の方法、環境も見直しながら、大名行列奴隊が当会を含め多くの団体、演者に理解され、支えられ、今後に発展していくための基礎を構築していきます。

【組織改革と人材強化】

 当会は、現状20名前後のメンバーで活動している団体であり、企業で言えば中小 企業、または小規模企業に当たります。理事長以下、委員に至るまでピラミッド型の組織を形成しますが、これは当会のメンバーが60名、70名いた30年以上前と根本的には同じ組織で、様々な役職を経験できるメリットがある一方、小さい組織を部門や階層でさらに切り分けることで、例えば委員会が小さくなり議論が縮小するといったデメリットもあるかと思います。青年会議所という組織として、規程もあって組織体系をすぐに変えることはできませんが、当会を取り巻く環境に応じた柔軟な組織の構築が必要だと考えます。そのためにも、従来に増して全てのメンバーが各々の部門、階層でなすべきことを理解した上で、全ての事業に主体性を持って参画するという 意識改革が必要ですし、しなければなりません。メンバーとして、他人事で関心がない、関与しない事業が多くあるようなセクショナリズムに陥ってはなりません。また、青年会議所としての組織だけ作って、内向きの共益事業だけで終わることがあってはなりません。我々の存在意義、世間一般から求められていることは何なのか、委員会や役職等の違いはあっても自分事で受け止め、運動を引き起こせる、圧倒的な主体性を持って行動できるJayceeを育成することで、明るい豊かな社会を実現できる人材をつくっていきます。

【確実な組織運営と情報発信】

 当会における総会、理事会、例会といった諸会議については、新型コロナウイルス感染症の状況を注視しつつ、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の時代に合わせ、Webの活用も進めながら、確実に開催できるようにします。また、当会が創立以来63年にわたって作り上げてきた定款、諸規程を遵守しつつ、同時に時代に合わせた、実態に即した変更も行っていきます。例えば、2020年3月に制度化した産前産後休業、育児休業の制度(資格規程第4条に追記)は、女性メンバーが活動しやすくするために必要なものでした。また、人事については、監事の内1名をOB・OGの先輩方から外部監事として招聘することで、2021年度開始時点で入会3年未満が8名という、全体的に経験の浅い現役メンバーに対し、適宜助言、指導をいただきながら、確実な組織運営に取り組みます。さらに、当会として5年ぶりに女性メンバーを委員長に任命し、総務広報も担ってもらうことで、ホームページ、SNSからの女性的な観点を踏まえた情報発信の他、各種メディアへの情報提供、露出を増やしていきます。特に、このコロナ禍にあって目立つ事業を構築するのが難しい中、日々の活動内容、地道に取り組む運動内容をわかりやすく発信すること、女性メンバーの活躍を発信することで、当会が活気づき、当会の運動、活動への認知がより高まることを確信しています。

 

【出向によるJayceeとしての成長】

 2021年度は、当会より島根ブロック協議会会長を輩出することが決まっています。それに伴う島根ブロック協議会への運営団の輩出、各委員会への出向者の輩出、さらに事務局機能を預かることまで、ブロック会長輩出そのものが1年間を通した1つの大きな事業と言えます。そして、この事業を成功させるためには、なんとなく、数合わせの出向ではなく、出向者が出向の意味を理解し、目的意識を持って出向することが必要ですし、LOMとしての積極的な事業への協力体制の構築が不可欠です。私自身、昨年度は出向させていただきましたが、他LOMのメンバーと共に1つの事業に携わり、作り上げることは、その事業の計画から実施に至るまで異なった手法を学び、異なった発想を得ることができる有意義な時間でした。そして、当会の事業だけでは得ることのできないJayceeとしての成長の機会をいただいたと感じます。2021年度はブロック会長の輩出によって、例年以上にそうした機会を得ることができるものと確信しておりますし、出向したメンバーが各々の出向先から成長して戻り、出向先から多くの経験を持ち帰って還元することで、当会の成長につなげます。

【ブロックスポーツ大会の開催】

 2021年度は、ブロックスポーツ大会を当会が主管し、浜田の地にて開催することが決まっています。前回2004年に主管して以来、17年ぶりの開催となりますが、そのブランク以上に問題となるのが、このコロナ禍の中、どのようにしたら開催することができ、確実な設営、運営ができるのかということです。会場への入場人数の制限、時間差をつけた速やかなメンバーの移動、場合によっては競技種目の変更、ルールの変更等、これまでにない設営、運営が求められるかもしれません。ブロック大会の懇親会やブロックスポーツ大会といった島根ブロック協議会の事業に対し、なぜLOMが主管を受け、事業の計画から設営、運営に取り組む必要があるのかと言えば、「そのプロセス自体にJayceeとしての成長がある」という点に尽きるのではないかと考えます。2021年度ブロックスポーツ大会を成功させ、各LOMのメンバー同士の交流を深めるという目的の達成は当然として、島根ブロック協議会、そして各LOMの協力をいただきながら1つの事業をつくり上げるというプロセスを活用し、当会メンバーのJayceeとしての成長を図ります。

【拡大のための拡大からの脱却】

 これから青年会議所の主な拡大対象となってくる若者は、平成14年4月施行の学習指導要領による教育を受けた「ゆとり世代」であり、さらに若いほど、その上の世代が多くを占める我々メンバーの感覚は通用しません。私自身、仕事で求人活動にも関わっていますが、給与より休暇の日数、出世より平穏な地位を望む人が多く、与えられた仕事以外はしない人が多いという状況を実感しています。そうした若者の中から青年会議所に入会し、委員長、果ては理事長になって、自身の時間を削って青年会議所運動、活動に取り組むことができる人材を探すことは容易ではありません。そうであれば、当会としても、今いる我々メンバーに都合のよい仕組みから拡大対象となる若者に合わせた仕組みに変えていく必要もあるかもしれません。また、各種の情報端末が普及、発達し、その情報の精度は別としても、何事も事前に検索することができる現代において、自身が納得し腑に落ちないと行動しないと言われる若者に 対して、現在広く認知された事業がない、過去の事業が忘れられた状態で、拡大のための拡大をしても通用しません。会員拡大は事業を行うための手段の1つであり、当会が公益団体である以上、やはりその本質である「まちづくり」「ひとづくり」に関する公益事業により人を引き寄せ、巻き込み、魅力を感じてもらうことから会員拡大を目指すべきです。そのため、今年度の事業については、上述の社会開発運動や組織開発運動も含め、可能な限り対外に見える化し、拡大対象となる若者が参加しやすい環境を構築して、巻き込んでいきます。その上で、誰かがやるという他人事ではなく、当会の魅力を伝えていくために何をすべきなのか、メンバー各々が自分事として捉え、組織全体が主体性をもって会員拡大に取り組むことで、多様性のある持続可能な組織を構築していきます。

 

【終わりに】

 改めて、一般社団法人浜田青年会議所は公益団体であり、共益団体ではありません。例えば、メンバー向けの研修事業のような、一見して共益事業に見える様々な運動、活動も、最後には公益事業にリンクしていなければなりません。Webの活用等、事業の手法は変わっても、当会の目的は明るい豊かな社会の実現であることに違いはありません。ただし、過去と同じような事業を行うこと、過去と同じように物事を進めることが、現在、そして未来において、このまちの人々から期待されること、このまちのために取り組むべきことに必ずしも一致していないこともあり、もう一度、我々の事業内容、存在意義を考え直す時期に差し掛かっているのかもしれません。この新型コロナウイルス感染症を肯定的にとらえるなら、そうした不一致を直ちに軌道修正し、我々メンバーがどうあるべきか議論し、これまで以上に認知、支持される組織となるためのきっかけを与えてくれたということでしょう。さらに、毎年のように起こる地震、豪雨といった自然災害に対して、我々メンバーがどれほど柔軟に、素早く対応できるかも見られていると思います。先が見通せない中、2021年度も何が起こるかわかりませんが、環境、情勢の千変万化な変化に対して千変万化に対応していく、この枠組みを崩さなければ困難は必ず乗り越えることができ、より魅力的で今後も持続可能な組織となることができます。メンバーの皆様、そして関係するすべての皆様、この1年間のご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

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